魚界の「芸妓」-クロブチテンス
日本の魚類学者荒賀忠一と吉野哲夫は、1986年に新種のテンスを発見しました。この魚は、黒と赤の太い縞模様に特徴があり、まるで黒い魚体に朱色の帯をのせているかのようで、日本の「芸妓」を思わせます。芸妓の黒髪と赤い唇の対比や、はにかんだ小さな唇と情のある眼差しを思わせることから、民族意識が強い日本人はこの魚に「芸者テンスXyrichtys geisha」という夢のような学名を付けました。

この「芸者テンスXyrichtys geisha」が発表されてから20年後の2006年、行政院農業委員会水産試験所東部海洋生物研究センターは、国家科学委員会デジタルアーカイブ国家科学技術プロジェクト「台湾東部魚類標本デジタルアーカイブ」実施中に、なんと台湾東部の海域で、この「芸者テンス」を発見しました。世界中で、映画「SAYURI」が世界中でセンセーションを巻き起こしていたちょうどそのとき、折りよくこの魚を捕獲した漁師は、こんな美しく魅力ある魚は見たことがないと言ったそうです。芸妓がその儚い美しさで人を魅了するのであれば、魚界の「芸妓」も負けてはいられません。

この学名「芸者テンスXyrichtys geisha」―クロブチテンスは、分類学上はスズキ目ベラ亜目ベラ科テンス属の魚です。中国語名は「黑背連鰭虹彩鯛」、台湾では「紅新娘子(赤い花嫁さん)」、「日本婆子(日本の婆さん)」、「四齒仔(四本歯)」などの俗称で呼ばれています。この俗称からも、この魚の特徴が容易に想像できるでしょう。花嫁のような絢爛豪華な外観や、日本女性のように魅力的な一対の八重歯から、台湾の漁師たちはこの魚に実際の魚の特徴をよく表す名前をつけたのです。

台湾の魚類誌によると、テンス属魚類は計6種あります。テンスは、魚体が平坦で、背びれが高く鋭く隆起しており、口は尖っておらず、顎の上下に円錐の歯が並び、口の外側に犬歯が出っ張っており、尾鰭は丸い形をしています。通常、サンゴ礁周辺の砂利や貝殻の破片からなる海の底に棲息し、ゆっくりと泳ぎます。台湾の東部海域でよく見られるのはホシテンス(Xyrichtys pavo)で、褐色の体の胸びれの内側の後ろ上方に赤い斑点があり、背びれの端が黄褐色です。一方、魚界の「芸妓」―クロブチテンスは、台湾では新品種であり、背びれの第2棘と第3棘長の間の膜が凹んでおり、背びれと腹びれは黒で、魚体中央の赤と強烈なコントラストを成しています。

台湾東部海域魚類標本デジタルアーカイブ 農業委員会水産試験所 執筆
魚界の「芸妓」-クロブチテンスに関する展示品


ホシテンス(Xyrichtys pavo
テーマとキーワード:ベラ科魚類標本
説明文:発育段階:成魚
資料識別コード:標本番号:NMMBP00209


バラヒラベラ(Xyrichtys verrens
テーマとキーワード:ベラ科魚類標本
説明文:発育段階:成魚
資料識別コード:標本番号:NMMBP00286


ホシテンス(Xyrichtys pavo
テーマとキーワード:ベラ科魚類標本
説明文:発育段階:成魚
資料識別コード:標本番号:NMMBP04317


ホシテンス(Xyrichtys pavo
テーマとキーワード:ベラ科魚類標本
説明文:発育段階:成魚
資料識別コード:標本番号:NMMBP04434


ホシテンス(Xyrichtys pavo
テーマとキーワード:ベラ科魚類標本
説明文:発育段階:成魚
資料識別コード:標本番号:NMMBP04960


バラヒラベラ(Xyrichtys verrens)
テーマとキーワード:ベラ科魚類標本
説明文記述:発育段階:成魚
資料識別コード:標本番号:NMMBP04964


中国語俗称:「沙丁斑」( soa-teng-pan )
テーマとキーワード:ベラ科魚類標本
説明文:標本採集方法:一本釣り(pole and line)
資料識別コード:標本番号:FRIP20009


中国語俗称:「沙丁斑」( soa-teng-pan )
テーマとキーワード:ベラ科魚類標本
説明文:標本採集方法:一本釣り(pole and line)
資料識別コード:標本番号:FRIP20042


中国語俗称:「紅娘仔」(ang-niu-a)
テーマとキーワード:ベラ科魚類標本
説明文:標本採集方法:一本釣り(pole and line)
資料識別コード:標本番号:FRIP20077


中国語俗称:「紅娘仔」(ang-niu-a)
テーマとキーワード:ベラ科魚類標本
説明文:標本採集方法:一本釣り(pole and line)
資料識別コード:標本番号:FRIP20077