人生の通過点:イニシエーション |
生老病死とは、人間誰もが避けて通ることはできない人生の通過点です。
そしてまた婚姻は遠い昔から続くありふれた営みです。このように、「生」への期待、「死」への敬意、「結婚」への祝福、「成年」への憧れなどはみな人間が人生におけるさまざまな段階を大切にしてきたことを表しています。そしてそうした段階の通過は、身体や心理、社会における役割の変化を示しており、新たな喜びや困難、あるいは責任をもたらすものとなっています。これら人生の過程に重要な意義を与えるため、ほとんどの民族は自らの「イニシエーション」を生み出し、人生のさまざまな通過点における変化をシンボル化することで、グループを構成する人々が平穏無事に人生を歩んでいくことを助けています。ルカイ族の円舞や嫁泣き、パイワン族の喪布の製作、アミ族の成人儀礼、そして中国西南部ミャオ族の弔い飯、タイ族の「做擺」(礼拝の一つ)、チャン族の「跳端公」(死者を悼むための踊り)など、これらはみな、各民族のイニシエーションへの重視とイニシエーションの伝承を表しています。
オランダ人学者アルノルト・ファン・ヘネップ(A.van Gennep)の著作『通過儀礼(Les rites de passage)』では「イニシエーション」を「人生において、あるステータスから他のステータスへ移り変わる時の特定の儀礼」と定義しています。ですから「イニシエーション」とは、生命に対する尊敬の念に基づき、これら人生の各段階を体系的に分かり易くしたものなのです。すでに定着した多くの「儀式」は、今となればどのような由来があったのかわからなくなっていますが、それら多くの理由を失くした習俗が、現代社会に生きる私たちの毎日に大きな影響を及ぼしていることは否定できません。デジタル・アーカイブ・ユニオン・カタログを通して、私たちは様々な民族が人生におけるそれぞれの通過点で行う儀式について学ぶことができます。そして、そこで改めて生命の意義や、生命を大切にすることに思いをいたすことになるでしょう。
象徴性に溢れた儀式における人物と品物
人生の通過点:イニシエーションに関する展示品
過去名称:羽飾り
テーマとキーワード:民族:アミ族
説明:成人儀礼で青年が被る羽の冠takakuは、白い羽を頭の上に付けることで「母親は常に頂点にいる存在で、そんな太陽のような母親を尊敬し敬愛する」という意味がある。冠の外側には長くて赤い布が二本ついており、その上に白い羽が貼り付けられて、胸の位置まで垂れ下がっている。これはmaraiと呼ばれ、装飾に用いたもので、踊ると体の動きに合わせて揺れるのが美しいとされていた。
解説:成人儀礼で青年が被る羽の冠takakuは、かつてtounkaangと言うサンケイ(正式名はスウィンホー・フェザント。台湾の限られた地域にしか棲息しない稀少な鶉鶏類)の二本の白い尾の羽で作られていたが、その後、この鳥の生息数が減少したことから、最近は輸入された別の鳥の白い羽を代わりに使用している。白い羽は太陽の光を象徴していて、アミ族は太陽の光は白いと考えていることから、白い羽を頭の上に付けることで「母親は常に頂点にいる存在で、そんな太陽のような母親を尊敬し敬愛する」という意味を表している。冠の外側には長くて赤い布が二本ついており、その上に白い羽が貼り付けられて、胸の位置まで垂れ下がっている。これはmaraiと呼ばれ、装飾に用いたもので、踊ると体の動きに合わせて揺れるのが美しいとされていた。
過去名称:肩掛け
テーマとキーワード:民族:パイワン族
説明:
用途:平民の喪服
解説:パイワン族の社会では、服喪中のタブーが多い。笑ってはいけない、頭を下げて歩かなければならない、宴会に参加してはいけない、服喪を示す飾りを身につけなければならないなど、他の者と異なる身分であるゆえ自律しなければならないのである。
材質:綿、刺繍。製作技術:織り、縫い、刺繍。
データ識別:データ番号3145
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