北宋 定窯 白磁嬰児型枕

高18.8cm 底径31×13.2cm

唐代の磁器製枕は、三彩、褐釉、黒釉、長沙銅官窯などの釉色が多く、「睡枕」や「脈枕」などが多くあります。宋代になると、磁器製枕の造型はより多様化し、特に葬送用の枕は大型になり、様式や紋様も寓意に満ちたものとなった。この嬰児形の枕は日用品であったと思われる。可愛らしく生き生きとした造型で、健やかな赤ん坊は衣服の上に模様の入った錦織のベストを着ている。(北京故宮博物院にも同型の枕があるが、上着は無紋である。)錦織りの敷物の上に腹ばいになり、両足を交差させ、のんびりした様子が実に愛らしい。この枕は前後二つの型にあわせて作られた形ができた後、顔の表情と衣服の線を道具で彫りいれ、より生き生きとさせた。底は平らで整っており、左右に小さな丸い二つの穴あけてあるが、焼成の際に密閉状態であると、器内の空気が熱で膨張し爆発するのを防いだ。釉は灰色がかった象牙色。定窯は石炭を使って焼成したので、酸化炎で焼かれ、釉の色が灰色を帯びた黄色になっている。底に流れた釉が幾筋かあるが、これは所謂文人たちが言うところの「涙痕」である。器底に「乾隆癸已三十八年(西暦1773年)春」の御題詩款がある。(文・蔡和璧)

 

提供:国立故宮博物院