明 王寵 自書五憶歌

巻 紙本 縦29.3cm 横294.7cm

王寵(1494‐1533)、長洲(現在の江蘇蘇州)の人。字は履仁、または履吉、号は雅宜山人。父親の王貞は一介の商人であったが、古器物や書画の収集を楽しみとしていた。父親の影響で、王寵と長兄である王守は文徴明(1470‐1559)と蔡羽に師事して書法を学び、詩文にも優れていた。王寵の書法は王献之(344-386)、虞世南(558-638)を臨模して学んでいる。祝允明(1460-1526)、文徴明とともに「呉中三家」と称えられる。

本作は行草書の作品で、自由奔放な筆の走りが飛び上がるかのように生き生きとしている。王寵の筆遣いは硬く直線的で、転筆の時にのみわずかに丸みを帯びるため、筆調は硬く峻厳な風である。今草(章草体)の作品であるのに、一文字一文字がほぼ独立しているが、筆跡には章草の筆意が感じられる。「眠」、「泰」、「裂」などの文字に見られる右下へのはねの收筆は隷書の韻致が残されている。本作は王寵35歳の時の作で、質感の硬い金栗山蔵経紙に書かれているため、王寵の起伏に富んだ、素早く力強い筆さばきなどの特色がより強く表れており、現在にまで伝えられた名作の一つである。

 

提供:国立故宮博物院