軸　紙本　縦108.4cm　横42.6㎝

張雨（1283－1350）、字は伯雨、号は句曲外史、貞居。浙江銭塘の人。30歳で茅山（江蘇句容県句曲山）に入り道士となった。60歳で道服を棄て儒者の身分を回復し、江浙一帯を行き来して、その地の文学者や芸術家たちと詩文のやり取りをした。文学と書法ともに造詣が深く、元代の道教及び仏教界、文人たちの間で声望を集めた。

張雨の書法は張孟頫に教えを受けた。文字は美しく伸びやかで、明代の評者は、「北海（李邕）を師とし、その間に素師（懐素）を学び、正統な流れではないが、一種独特の味わいがある。」と評した。本作の字形を見ると、時に大きくときに小さく、傾いたり揺れ動いたり変化に富み、細筆で書いた大きな文字、墨も乾湿交互に現れ、筆法は鋭く力強く、縦横に筆を走らせる奔放さの中に峻厳な勢いがある。特に第二行と第四行に見られる、乾筆による掠れが連綿と続く草書の部分は懐素の「自敘帖」にかなり近く、楷書、行書、草書体を交互に用い、自由奔放な筆の動きをまとめあげる高度な技術が見てとれる。（文・何傳馨）

提供：国立故宮博物院