五代南唐 趙幹 江行初雪

絹本著色 縦25.9cm 横376.5cm
 
「江行初雪図」は、山水と人物両者に重きを置いた作品で、画幅を広げると、南唐後主・李煜による古めかしい題字「江行初雪画院学生趙幹状」一行がまず初めに現れる。この11文字が本幅の画題と作者を明示している。


趙幹、江蘇江寧の人。幼少の頃から江南で生まれ育ったため、山水画は江南の景物を多く描き、特に構図に優れていた。「江行初雪」は川辺で厳しい寒さに耐えながら漁をする漁師の姿を描いている。淡墨で絹地を染め、そこに白粉の雪が散らしてある。寒林枯木はいずれも中鋒円筆、屈鉄盤糸(はっきりと輪郭線を描いてから色を塗る画法)の如く力強い。木の幹は乾筆皴染(筆を磨りつけ掠れた筆遣い)により描かれ、後人の皴山に似て自然と陰陽向背(遠近感)が表現されている。蘆の穂は赭墨を用いて一筆で描かれ、実に創意に富んでいる。低く盛り上がった中州と斜面の裾は淡墨で塗りつぶされ皴紋はなく、いずれも後人の画法と異なる趣がある。押された印章を見ると、宋、元、明、清各朝内府と個人が収蔵したことがわかり、流伝の歴史を有する名品である。(文・胡賽蘭)

 

提供:国立故宮博物院